2005年2月27日

邂逅の森、動物記、を読んで

熊谷達也の直木賞受賞作「邂逅の森」と新堂冬樹の「動物記」を読んだ。

先日読んだ「いのちの食べかた」に、牛や豚を屠殺する際作業に当たる人々はなるべく苦痛を与えないように細心の注意を払う、とあった。
苦しませてしまった経験は、一生後悔するものだと。

「邂逅の森」は大正時代そして近代化する日本の中での一人の東北マタギの壮絶な一生を描いた傑作。
獣の命を殺めて生計を得るマタギ達の間での最大の屈辱もまた、獣たちの死に際して無用の苦痛を与えてしまうことだった。
命とは、自然と人間の関係とは、そして真実の愛とは?
人が獣と邂逅する時、人は何を失い何を得るのか?
骨太の素晴らしい文体と緻密な考証によって、ともすれば陳腐になりがちなテーマを圧倒的な迫力で描ききっている。
読了後、感動のあまり言葉を失った。

「動物記」は現代日本の「シートン動物記」とも言うべき作品。
魅力的とは言い難いが誠実な文章で、捨て犬や人間のエゴが動物を苦しめる不条理をていねいに訴えかけている。
子供の頃「狼王ロボ」が大好きだったぼくは、なんだか懐かしい胸の奥がきゅんとする不思議な追憶にひたったのです。

まあ、犬が出てくるだけできゅんとしちゃうんですけどね........

投稿者 かえる : 03:02 |

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忘れていないか、人間たち。

人は人である前に動物である。恩、家族愛、おきて―2004年、新たな動物と人間のドラマ。心ゆさぶられる、大自然からの贈りもの。 詳しい情報を見る帯の記述に偽りなし。中編2作、短編1作からなる、動物3部作。・..

Ecotechnology : 2005年3月1日 19:22

週刊書評 ::: 邂逅の森

熊谷達也『邂逅(かいこう)の森』(文藝春秋)http://books.bitway.ne.jp/shop/mt-detail_B/trid-main/ccid-0101/cont_id-B0420500118.html山に生くる人々邂逅とは、すなわち、偶然の出会い。山と森とに育まれ、・..

Kuchinashi Blog : 2005年7月2日 13:24

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mbt shoes sale usa かえるリポート 邂逅の森、動物記、を読んで

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コメント

この頃、本を読みません。
かえるさんが紹介される本に時々、興味をもちますが、まだ読んでません。
将来、田舎に移り住み、モンペで生活する予定なので、それまでに読みたい作品のリストを作ることにします。
でも、「いのちのたべかた」はすぐにでも読んでみたいですね。

学生の頃、屠殺場実習がありました。
あっ・・・屠殺の実習ではありません。

牛は撲殺、豚は電機ショックによる屠殺です。
断末魔の悲鳴は長いこと耳から離れませんでした。
作業員の方から、「こうして私たちは命を頂いているのだから、食事の時には、いただきます、ごちそうさまを忘れないでね。将来、子供を育てるときに、子供たちに話して下さい。」と、言われました。
その日の実習を終え、顔に飛び散った血液をアルコール綿でぬぐったのを思い出しました。

昨夜、焼き肉食べてきたのですが、美味しそうな食材を目にして、「いただきます」も忘れてしまいました。
うぅぅぅ、、、、反省。

帰宅後、長男と一緒に寝ました。
私、寝床ジプシーなんです。
毎晩、隣に寝る人が違うんです。
で、それがどうしたの?って・・・
えーと、布団取られて寒かったんです。
我慢できなくて、4時に起きちゃいました。
もう、限界かもしれません。
今日はDRお休みして、お仕事の後「ニトリ」に行ってみよう!
そんなわけでして、モー家の皆さん、来週お会いしましょう。
これが言いたかったんかい!

投稿者 ぷー : 2005年2月27日 05:21

邂逅の森・・・感動したね。
読みながら、おいらはすっかり主人公のマタギ、富治になりきって猟にでていましたよ。
涙したり怯えたり興奮したりね・・・(汗)
厳しい時代だったのだろうけれど、現代には無いすごく豊かな物も感じたりしました。
いい本をありがとう。
夕べは九代目ではなく、いいちこの米をお湯割で・・・

投稿者 リバゴホとー : 2005年2月27日 11:28

モンペ生活の夢素敵ですね、うちにも似たような憧れがあります。
「いのちの食べかた」というか森達也はいいですね、姿勢が首尾一貫しています。
「と場」や「と殺」を題材とはしていますが、本当のテーマは無知や大衆の思考停止が多くの差別や戦争やその他のバカバカしい問題を生み続けている恐ろしさ、ということだと思います。
世間が「オウム信者」だから何してもいいんだ、という風潮だった頃に教団の中に入ってドキュメンタリィ映画を撮った人ですからね、気合いが入っています。
中学生に向けているけれど、たぶん大人が読んだ方が感じることが多いと思います。ぼくたち大人ってほとんど思考停止状態ですからね。

屠殺場実習があるなんて、立派な学校だったんですね。
大型のほ乳類ですからね、やっぱり何というかその、顔に飛び散った血液、っていう感じの衝撃になりますよね。

「ニトリ」安いしおもしろいみたいですよ、先日妻が友人と行って楽しかったようです。
来週、晴れて欲しいですねー

投稿者 かえる : 2005年2月27日 11:47

>リバゴホとーさん

山に行きたくなったでしょー、楽しめたようでよかったです!
「岩魚幻談」一昨日いつもの本屋で探したけど売れちゃってた....

「いいちこ」に米ってあるんですか!?
はじめて知りました......

投稿者 かえる : 2005年2月27日 11:52

トラックバック、ありがとうございます。

「邂逅の森」、感動ものでした。
私は、電子書籍「リブリエ」で読んだのだけれど、
単行本だと結構な厚さになるんじゃないかと。
最初こそ読むのに時間がかかりましたが、
3分の1ほど読んだら読まずにいられなくて、
一気読みしてしまいました^^

私は富治の妻とその弟の生い立ちに感慨深い思いを抱きました。
いつの時代も変わらない人間の情ってあるんだなって。

なんだか読み返したくなってきました。
早く文庫本にならないかなぁ。

投稿者 べるみ : 2005年2月28日 20:14

べるみさん、コメントありがとうございます。
電子書籍ぼくはまだ未体験です、慣れると違和感なく読めるものなのかなぁ。

あの兄弟、人間の業とか情とか色々考えさせられますよね。

ぼくは早く「相剋の森」を読みたいと思っています。
分厚いのはいいんだけどその分値段がスゴイから、ぼくもやっぱり文庫はありがたいですね。

投稿者 かえる : 2005年2月28日 23:09

TB有り難うございます。
こちらも、TBさせて頂きます。

「邂逅の森」は、まだ読んでいませんので、
是非、読んでみようリストに、
追加しておこうと思います。

文庫化は、いつになるのかなあ。

投稿者 ka2ya : 2005年3月1日 19:25

はじめまして。
僕も、「いのちの食べかた」を読んで以来、色々なところで、本の内容を思い出します。
http://blog.drecom.jp/sunnydaysintokyo/archive/15
http://blog.drecom.jp/sunnydaysintokyo/archive/10

一人でも多くの人々が自覚的な生活を送れるといいですね。

投稿者 sunnydaysintokyo : 2005年3月23日 15:24


かえるさん、返信ありがとうございます。
そうなんですよね。
僕も今から社会人になろうとしているわけですが、
現時点で思考停止状態に多々陥ります。
これは、自分にとっては不幸な話しだし、
世の中に於いてもマイナスです。

何とか思考を続けられるようにしたいものです。
今度、新堂冬樹の「動物記」を読んでみようと思います。

投稿者 sunnydaysintokyo : 2005年3月23日 23:28

sunnydaysintokyoさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
http://www.blacklab-morphee.com/blog/archives/2005_2_24_157.html
にもう少し詳しく「いのちの食べかた」に関して触れています。

ニュースを見たとき、誰かが誰かを批判しているとき、自分が何かの判断を行うとき、ぼくもこの本を思い出します。

自分が「思考停止」してしまいそうになったら、この本を思い出そうと決めています。

投稿者 かえる : 2005年3月23日 23:30

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