2005年5月8日

古道具 中野商店

西東京の街の古道具屋「中野商店」、そこに集う人々。
それぞれのじれったい恋のようなもの、あるいは恋そのもの。
小道具も、科白も、行間の空気感も、まさに川上弘美ワールド。

登場するアパートの大家夫妻は、大きなアフガンハウンドを飼っているが、やがて死んでしまう。
主人公ヒトミが、恋のような友情のようなあいまいな感情を抱くようになるバイト仲間のタケオは、「犬が死ぬと、つらい」とぽつりとつぶやく。
同級生のいじめによって小指の先を失った過去を持つ彼は、子供の頃から飼っていた犬が去年死んだから中野商店で働き始めた、と言う。

この小説で犬が出てくる場面は、このちょっとしたエピソードだけ。
でも、この作家は犬と暮らすということの究極的な意味を、自らの小説に残酷に利用する。

犬は飼い主より、早く死ぬ。
飼い主は犬より、早く死んではいけない。
犬と暮らすということは、その死を必ず受け止めなければならない、ということ。
愛する者の死を、必ず受け止めなければならない、ということ。

「古道具 中野商店」川上弘美

投稿者 かえる : 14:06 |

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古道具中野商店<川上弘美>−本を読んだ(今年10冊目)−

新潮社 ; ISBN: 410441204X ; (2005/04/01)評価:86点(100点満点)「川上弘美ワールド炸裂」などと簡単に片付けたくはないが、うまくこの小説のよさを説明できないのだから仕方がない。物語にメリハリがあるわけ・..

デコ親父は減量中(映画と本と格闘技とダイエットなどをつらつらと) : 2006年1月29日 20:55

「古道具 中野商店」 川上弘美

‘だからさあ、なかなかいいんだって、この本!’古道具 中野商店の店主中野さん風に言えば、こんな調子である。川上弘美氏の著書はコレが初。女性作家を元々苦手とする私が、珍しく本書に興味を持ったのは、至っ...

雑板屋 : 2006年5月19日 21:39

古道具 中野商店 川上弘美

古道具 中野商店■やぎっちょ書評わかった!あちきは今・・・調子が悪い!!本を読んでいる途中で何度もぼーっとするぞ。読むのがだんだんしんどくなるぞ。速読すると何書かれているのかわからなくなってるぞ!そ・..

"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! : 2007年12月27日 01:52

コメント

こんばんワイン☆
ずっと実家で飼っていたポメラニアンのラン助が13になって、
歩けなくなり、寝床におしっこもしてしまうようになったとき、
家で飼っている犬の死を迎えるのが、2度目の父親はラン助が死んだ時に埋める穴を掘りました。
そのとき、まだ若かった私は「早くラン助が死んじゃえばいいとでも思ってるのかなあ。。。お父さん、冷たい人だ。。。」と思いました。
でも、今となっては、父親が穴を早々に掘ったことは、冷静にその死を受け入れているような、父親ながら、オトナな行動だったな〜と思います。
ただ、休日にしか穴を掘ったりする時間がなかったたのも理由の一つだとは思いますが^^;

ついでに、今年のお正月にその実家の庭でアリアを遊ばせていたら、アリアがよりによって、そのラン助のお墓の上にでっかいう○ちをしました(笑)
父親は「もう、ランが怒るデ〜〜〜(´〆`メ)」といって、う○ちを別の場所へ埋めました。

投稿者 アリアママ : 2005年5月9日 21:34

こんばんワルツ♪
......で、Shall We ダンス?

なんかご実家、広大な敷地を持ってそう.......
お嬢様っぽいもんね、アリアママ。

アリアママパパは早々に穴を掘ったみたいだけど、空想癖過多なぼくなんて、今からペットロス対策に余念がないからね。
モーが10歳になったら、モーの若返り効果期待とペットロス対策のために子犬を迎えよう、とかね。
でも、もし死んじゃったら、その時まで続けたいと思っているこのホームページ読み返しておいおい泣くだろうなー。
 



投稿者 かえる : 2005年5月10日 00:31

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