2006年6月10日

気分はサムライ

ずいぶん昔の話になる。
社会人になってからいくらも経っていない頃。
シモキタの小さなライブハウスで、所属するレコードメーカーからも契約を切られる寸前、じり貧状態のバンドのライブを観た。
強引にコール&レスポンスを強要する泥臭いステージングに、トーキョーの冷めた観客は引き気味。
それでも一途に胸を張って声を振り絞る姿と、いくつかのシンプルで不器用なラブソングが印象的だった。

彼らがその後10年以上もトップアーティストの座を維持する存在になるとあの時確信していた人は、ぼくを含めてほとんどいなかったんじゃないだろうか。
インパクトのあるPV等で徐々に注目を集め、やがて「ガッツだぜ!!」の大ヒットを出すに至っても、彼らがずっと第一線に残り続けるとは思わなかった人も、たぶん少なくはないと思う。
彼らはどうだったのだろう?
自分達がいつか成功することを信じて疑わなかったのだろうか。
たぶん、そんなことはよくわからなかったんじゃないだろうか。
当たり前だ。誰にも未来の事なんてわからない。
でも、彼らにとってステージの上は、他に代わるもののない神聖で特別な場所だったのだと思う。演奏することは何よりも楽しかったのだろうと思う。ソレが、ただただ好きだったのだと思う。
きっと、自分達の曲や声やパフォーマンスのことは信じ続けていたのだ、とぼくは思います。

ウルフルズの「サムライソウル」は、とても素敵な歌。
時々、なにか大きなものに胸の中を掴まれて泣きたくなるような曲に出会うことがありませんか?
ぼくにとっては、近年聴いた中では、コレがそうかな。

「へなちょこでも気分はサムライや」
サムライソウル/ウルフルズ  詞・曲:トータス松本

「最近、歌うことに関しては誰にも負ける気がせえへん」みたいなことをトータスさんが言っていたという話を聞いた時、昔観たライブでの彼らのことを思い出して、ちょっと胸が熱くなった。
その声は、今や本当に無敵の強さでぼくの心に届くのだ。


余談だが、リチャード・バックが「イリュージョン」(ぼくが読んだのはリンクの新訳版ではなく村上龍訳の旧刊)で伝えたかったことってそういう事じゃないだろうか。
無邪気に信じる心と、ちょっとした勇気。
言葉にすると陳腐だけどね。


さらに蛇足ですが.........
ドイツのSAMURAI BLUEな人たちも、がんばってね!


「サムライソウル」 ウルフルズ

投稿者 かえる : 10:36 | 音楽

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コメント

ジャズとアウトドアが好きな「おしゃれアダルト」な方かと思っていましたが、意外とモ熱いモものもお好きなようですね(笑)。
なんて、僕もウルフルズはフェイバリット・バンドの一つなんですがノ。
先日J-Waveで聴いた話ですが、まだウルフルズが売れない頃、事務所の方がトータスと一緒に街を歩いていたところ、突然「オレには才能がない。希望を持って東京に出てきたのは間違いだった。もう辞めたい」と泣きだしたことがあったそうです(それが「ガッツだぜ」が売れ出す3ヶ月ほど前だったとか)。
トータスの歌には前向きな歌詞が多いですが、実はアレコレ悩んだりくよくよしたりすることの多い人みたいです。でも徹底的に悩んだところから生まれてくる言葉なので、実感から来る「力」があり、世間一般の「ガンバレ・ソング」とは一線を画しているのだと思ってます。

それから確かにバックの作品には、トータスの歌に共通するようなもの(僕は勝手に「生へのダイナミズム=意味を超えて自分の「生(世界)」と向き合おうとすること(=Rock'n Roll)」と言ってますが)があると、僕も思います。

ところで「大阪ストラット」。
カラオケで3度挑戦し、すべて撃沈してますノ。

投稿者 wanrei : 2006年6月16日 19:20

wanreiさん
あるブログのお友達によると、ワタクシは"ジャズとバーに詳しい人"という印象を与えているとのこと。かな〜り誤った認識であるとは思われますが、「すご〜くイヤなヤツ」というイメージで、ワタクシ大変気に入っております。
"ジャズとアウトドアが好きな「おしゃれアダルト」"というキャッチフレーズも、なんともいけ好かないヤローという響きがして、こちらも非常に気に入りました。がんばって、そのイメージをキープしていたきたいと思います。マジで。
今後愛読の雑誌を聞かれたら、「LEON」ということにしておきますね。いや、それとも「BRIO」とかそっち系にするべきか......?!

オレの音楽のルーツは、ひとことで言うと、野口五郎とマイルス・デイビスとさだまさしと久保田早紀とプリンスと甲斐バンドと映画音楽(ぜんぜん、ひとことじゃないか......)。マジで。
長くなるので一例を挙げると、野口五郎はラリー・カールトンとデイヴィッド・サンボーンへ繋がり(ホントに繋がっているのだ、なぜだかわかる人はあまりいないだろうけど)、やがてスティーリー・ダンへと繋がっていくのだ。マジで。
ちなみに、久保田早紀は最終的にユーミンへと帰結したのだ。マジで。
「こんなかっこいい音楽があったのかあ」と衝撃を受けたプリンスの記事が読みたくて「rockin'on」を買ったら、甲斐バンドの悪口が書いてあったので、「洋楽至上主義」的なものに嫌悪感を抱くようになり、そのあおりで洋楽へも一定の距離を置くようになってしまい、ずいぶん損したのだ。ついでに言うと、「cut」という素晴らしい雑誌が創刊されるまで、渋谷陽一および渋谷陽一的なものにも偏見を持っていたのだ。マジで。
それから、マイルス・デイビスとの衝撃的な出会いは、文化放送「谷村新司のセイ!ヤング」という番組内「今だから言える暗い過去」というコーナーでテーマ曲に使用されていた「死刑台のエレベーター」なのだ。この人気コーナーは、小中学生大興奮のエッチな話題が満載であり、ジャズ&eq;情けなく且つ淫靡でいかがわしいもの、というすり込みをなされたオレが、やがてジャズはジャズでもメインストリームとは言い難いチェット・ベイカーへと傾倒していくのは思えば自明のことであったのだ。マジで。
さだまさしと映画音楽については、また今度。。。
あ、結局また長くなってしまった..............

えーと、なんの話でしたっけ.......?
そうそうウルフルズですが、ウルフルズと上記のアーティストの共通点はと言うと............ズバリ「せつなさ」なのです。
ぼくが音楽に対して、前提としてまず求めるのは「せつなさ」なのですわ。
その「せつなさ」を具現する要素というのはいろいろあると思うのですが、ウルフルズの場合それは「男として(泣きながらでも)守らなければいけない矜持」とでもいえばよろしいでしょうか、まあそんな感じのものだとぼくは思っちょります。これを楽曲の中に感じさせる男性アーティストは意外にも少なく、オレに言わせれば、日本ではあとは大江千里くらい...とかいう話に展開すると、ウルフルズファンにも千里ファンにも殴られそうなので、今日はこの辺でやめておきます。
そして、その矜持はつまりは「サムライ」ということなわけです。つまり、「サムライ」とはその身分や客観的状態を指す言葉ではなく、その志と姿勢に冠された名前なのです。
であるからして、現在の自分達が置かれた立場や能力を、おそらくは誰よりも客観的に把握し理解しているにもかかわらず「あと2試合あるということは勝ち点6を取れるということ」と言ったというナカタの勇気は、まさにサムライであるとぼくは思うわけです。
ついでに言うと、痙攣くらい根性で直せよな坪.......、とかいう話に展開すると、サッカーのことをなにも知らないくせに...と詳しい人に殴られそうなので、今日はこの辺でやめておきます。

えーと、なんの話でしたっけ.......?
そうそうそれで、その「せつなさ」の根底にあるのは、やっぱり「アレコレ悩んだりくよくよしたりすること」なわけで、まあ当然トータスさんもそういう素地をお持ちなんだろうと推察いたします。それに、当時の売れなさ具合といったら、絶望的でしたから。
でも、ウルフルズの一連の楽曲を、チャゲ&飛鳥的な「ガンバレ・ソング」と同一視している方がいるとしたら、とても悲しいことだとぼくは思います。マジで。
ついでに言うと、チャゲ&飛鳥のデビューから3枚目くらいまでのアルバムは、その「カラシ明太子&バターかけご飯」(これマジ美味いです)のようなミクスチャー加減が反則的ながらも素晴らしかったのですが、「SAY YES」だのなんだのはなんでアレがあんなに売れちゃうの?........、とかいう話に展開すると、九州出身の人に焼酎の一升瓶で殴られそうなので、今日はこの辺でやめておきます。

え〜と..........
ふむふむ、「生へのダイナミズム=意味を超えて自分の「生(世界)」と向き合おうとすること(=Rock'n Roll)」ですか!
このセリフ、素敵なので、メモっておいてどこかでこっそり使わせて貰います。。。。
この作家は、わりと最近までぼくにとって特に思い入れのある人ではなかったのですが、田渕義雄さんという方の古い本を読んでいた時に"リチャード・バックの新作「イリュージョンは」とてもいい本だ。ぼくはこれを読んで勇気という言葉の本当の意味を知った気がする"みたいなことが書いてあり、そういえば古本屋でリチャード・バックの本を100円で買ってほっぽってあるなあ、と思い出して確認してみると、偶然にもその「イリュージョン」だったという経緯があります。
そして、バックがあの本に書いたことは真実かも、と思う出来事が最近は時々あったりもしてます.........
Rock'n Rollかあ、「かもめのジョナサン」も読み直してみよっかな(まったく内容覚えてません、マジで)。

「バカサバイバー」、一度だけ挑戦しましたが、途中で符割がわからなくなりました...........マジで。

はぁ〜.......おかげでさまで、コメントのレス最長文記録を達成いたしました。たぶん。
ありがとうございました、ていうか長々とゴメンナサイ。金曜の夜だったので............

投稿者 かえる : 2006年6月17日 00:21

ごめんなさい。
文字化けしているところは、ジャズ「イコール」情けなく且つ淫靡でいかがわしいもの.........、です。

投稿者 かえる : 2006年6月17日 00:39

うはは!お返事コメントを読んで、なおのこと一緒に飲みたくなりましたね〜。ジャズの部分が重ならない以外(決して嫌いではないです。詳しくないだけ)、さだまさしもプリンスも甲斐バンドもかぶってます(笑)。
ところで、かえるさんのおっしゃる「せつなさ」。僕が正確に理解できているかはともかく、言えるのは音楽も文学も映画も美術もそしてスポーツも、人の感動を呼べる「作品」には、「作者」の実感がこもっていると思ってます。せっぱ詰まった想い。それを抱えているからこそ、作品にそれがにじみ出て、同じような想いを抱え生きている人の心を動かすのでしょうね。
そういえば、以前誰かが「パンクは『泣き』だ!」と言っていましたが、ここにも通じているのかも(ブルーハーツ、ハイロウズ、イースタンユース、最近ではサンボマスター、いずれも泣きました。笑)。
まぁ音楽の話は、また長くなりそうなのでこの辺で。
ところで僕も谷村新司のこの番組、ドキドキしながら聴いてました。さらに、好きだった女子達がよくこそこそとこの番組のことを話していて、中学男子の妄想爆発の甘酸っぱい、というか汗酸っぱい想いを思い出しました(笑)。
それから「ジョナサン」。僕のフェイバリット・ブックなんです。このこともまた機会がありましたら…。
それではスローな夜を…。
(あわてて書いたので、支離滅裂だったらゴメンナサイ)

投稿者 wanrei : 2006年6月21日 20:45

wanreiさん
いつでも誘って下さい。
なんなら今からでもイイっすよ。
飲みに来ていただいてもイイっすよ。今日は妻が夜勤で留守だし。
残念ながら、最近ほとんどお酒の在庫はなくなってしまいましたが.......

さだまさしがかぶる人も、プリンスがかぶる人もいますが、両方かぶる人はあまりいないッス。
そんなことなかったですか?
そうですね、「せつなさ」ってそういうことだと思います。
ぼくもサンボのデビュー曲には泣きました。
あの、ギターソロに入るところとか。

「かもめのジョナサン」、それほど思い入れのある作品だったのですね。
ぜひ今度、ゆっくりお話聞かせて下さいね。
それではスローな酒、じゃなかった夜を...............

投稿者 かえる : 2006年6月21日 21:36

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