2007年10月21日

超展望の山歩き 南八ヶ岳・三ツ頭〜権現岳〜編笠山 日帰り縦走

しばらく曇りや雨の日が続いた後、久しぶりに高気圧が張り出し、安定した好天が予想される日曜日。
たまたま翌日は有休を取っていたこともあり、梅雨の南アルプス以来となる一人の山歩きを、急遽計画することにした。
テント担いでのんびり北八ッの池めぐり、いやいや紅葉の瑞牆山もいいぞ、とさんざん悩んだのだが、どう考えても超の付く好展望が期待できそうなので、結局南八ヶ岳の権現岳を目指すことにした。今の時期はすぐに溶けてしまうが、八ヶ岳にもすでに降雪があったようだ。ぼくが高山帯を歩くのは、今シーズンはたぶんこれで最後となるだろう。夏や春では期待することが難しい眺望を、チャンスを逃さずに楽しんでおきたい。富士山、南アルプス北部、中央アルプス、北アルプス、奥秩父、etc.etc...................日本を代表する山々を遠望するのには、権現岳はまさにうってつけの山だろう。

権現岳は、ガイドブックなどでは1泊2日のプランで紹介されている山だ。三ツ頭、編笠山、もしくは西岳を経由、あるいは赤岳からキレットを越えて縦走していくしかアプローチのしようがないからである。
しかし、計算上は日帰りも可能だし、ネット上の情報をあたっても、実際に日帰りでピストン、あるいは編笠山〜権現岳〜三ツ頭と周回している方も多いようだ。単純にガイドブックのコースタイムを合算しても9時間程度はあるので、かなりハードであろうことは想像に難くないが、決して出来ないことはない、という感じか。蒸し暑い真夏にこんなコースを歩くのは遠慮したいが、爽やかな秋晴れの一日ならばなんとかなりそうである。
とは言っても、秋もこの時期ともなればすっかり日が短くなっている。日の出から日の入りまで、大体11時間くらいしかない。ただでさえ、足遅く、休憩多く、数百枚は無駄に写真撮りながら山を歩いている当方。万事順調にいったとしても、ギリギリのゴールインとなりそう......................。
ということで、早朝に車で観音平に入り三ツ頭〜権現岳〜編笠山と周回するルートを選択することにした。どちらかというと編笠山から回る人の方が多いようだが、三ツ頭を先にしておけば、体調不良等で調子が悪い場合、天女山へ早々と下山することも出来る。また、ルート後半には山小屋が二つあるので、どうしても間に合わなくなりそうであれば、青年小屋あるいは権現小屋で一泊してしまえばいいや、と考えたのだ。

数時間仮眠した後、深夜に自宅を出発。4時くらいに登山口となる「観音平」の駐車場に到着した。満天の星空に圧倒されました。
稜線上や山頂でご来光を迎えるつもりなのだろう、真っ暗闇の中歩き始める人がけっこういて、ちょっとビックリした。ぼくも、まだ日が昇る前、5時半前後にはヘッドランプを点けてトレッキング・スタート!!!

登山口の看板には、すっかりお馴染みの「熊の目撃情報あり」との張り紙。クマさんかぁ〜、あまり接近遭遇はしたくないけれど、離れた場所から観察して写真撮りたいな〜、と思っていたらホントに出ました..................森のクマさん。。。
いや、断言は出来ないんですけどね。10数メートル離れていたし、笹原から黒っぽい後頭部がほんの一瞬見えただけなので。
三ツ頭へ向かう小泉口登山コースに入る前、八ヶ岳横断歩道を通行中のことである。付近には笹をかき分けたような獣道があちこちに付いており、大型の動物が藪から出て遊歩道を横断する際に崩れ落ちたと思われる土が散乱していた。山中には獣の気配をミョーに感じる場所があるが、まさにそんな雰囲気。土の上に残された足跡を見てみると、どうもカモシカのもののようであったのだが、用心しながら歩を進めると..............まだ薄暗い中、すぐ横の山腹に広がる笹原の中でガサゴソと大型の動物が動く音がしたのだ。きゃあ〜〜〜〜〜〜!!!!
しかし、相手もこちらの存在に気付いたらしく、スゴイ勢いで斜面を駆け上がって逃げていき、葉の隙間から一瞬だけ後頭部らしき部分がチラッと見えたという次第である。カモシカだったらもっと背が高いだろうし、少なくてもニホンジカではなかった。イノシシとかだったのかなあ。でも、標高1500mを超えてるしなあ.......?!
あっと言う間の出来事だったので、落ち着いて観察することも、写真を撮ることも出来なかった。う〜ん、残念でした。距離をおいて、ゆっくり眺めてみたかったなあ。まあ、出合い頭に鉢合わせするようなことがなかったのは幸いでしたが.................
しばらくしてから、猛獣があくびをしているような(???)咆哮が聞こえてきた。ちなみにこの声は、編笠山からの帰路でも、遠くからこだましてくるのを何度も耳にした。(※後日追記/その後色々と調べたところ、「発情期のオスが他のシカに対抗するとき(の鳴き声)」としてネット上にアップされていた音声に似ているという印象を受けた。シカの発情期とも一致するし、この音に関してはシカのものだったのかもしれない)
あれがツキノワグマの鳴き声なのかどうかはわからないけれど、野生の獣の咆哮ってどこか悲しげな響きがするから不思議だ。何となく、レイ・ブラッドベリの「霧笛」を思い出してしまうのはぼくだけでしょうか?
それと、話はそれるが、山を歩いていると、まるで女性が悲鳴をあげているような「キャー」と叫ぶ動物の鳴き声をよく耳にする。森の中で突然あの音が聞こえてくるとちょっとビビるのだが、アレって鳥なのだろうか???ご存じの方がいたら、教えて下され。

さて、話を本日のトレッキングに戻すが、ともかく信じられないくらいの展望が得られた一日であった。
富士山の周囲以外には雲ひとつない完璧な青空が広がり、その状態は日が沈むまでまったく変わることがなかった。ぼくは八ヶ岳とは相性がよいらしく、毎回期待以上の好天に恵まれてきたのだが、これほどの遠望を堪能できたのは初めての経験である。あまりのんびりしていられるような行程ではなかったので、こまかく同定はしなかったが、驚くほど遠くの山々まで一望することが出来たのだ。たぶん、カシミールで表示される山は、ほとんど見えたんじゃないだろうか。また、山だけではなく、まるで甲府盆地や蓼科の別荘地の一軒一軒がはっきり確認できるかのような空気の澄み具合であった。写真を撮るには多少雲があった方が表情が出てむしろ好都合なのだが、眺望を楽しむのにはこれ以上はないと言えるくらいの天候だったのである
つい先日紅葉の便りが届いたばかりだと思っていた北アルプス高峰群の稜線は、すでに真っ白く染まっており、南アルプス・北岳もハッキリと雪化粧していた。赤岳も西斜面には白いものが見えたし、今日歩いた登山道にも少しだけ雪が残っていた。富士山は、まだてっぺんの方だけのようですね。

三ツ頭、権現岳、編笠山の山頂、またそれらを結ぶ稜線上からの赤岳は素晴らしい迫力だった。野辺山方面から眺める赤岳はそれほど目立つ存在ではないし、西側からだと角度によってはむしろ阿弥陀岳の方が強く印象に残ってしまうほどである。しかし、南端から仰ぎ見る赤岳は、まさに八ヶ岳の盟主たる貫禄を感じさせる立派さであった。
今年の紅葉はずいぶん遅れているようだが、さすがに稜線付近の木々はすでにほぼ葉を落としていた。山腹の紅葉はまだ地味なものだったが、南八ヶ岳はそもそもあの程度なのだろうか。山麓のカラマツの黄葉は、まだまだこれからといった感じであった。

山歩きの際は、景色の良い場所で長時間の大休止を行うワタクシですが、今回はかなり駆け足の山行となってしまった。こんなことなら、テント持ってきてのんびり一泊すればよかった、と青年小屋にてちょっと思いました。まあ、犬も赤ちゃんもいる身なので、なかなかそうも言ってられないワケですが。
足の疲労は激しいし、膝も笑いかけている。最後のピークとなる編笠山からの下りは、ともかく怪我をしないように、ゆっくりと歩いた。もう危険な場所はないし、時間的にもさほど心配する必要のないペースだったので、緊張することはなかったものの、ずいぶんと長く感じた下山の道中であった。
無事にトレッキングが終了したのは、ほぼ予定通りの16:20。
いやぁ、さすがに疲れました。

次回の八ヶ岳も、晴れるといいな。
あ、でも霧雨にけむる北八ッの森も良さそうだなあ。
八ヶ岳、大好き。

超展望の山歩き 南八ヶ岳・三ツ頭〜権現岳〜編笠山 日帰り縦走 リポート

投稿者 かえる : 23:54 | 犬連れキャンプ/トレッキング

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コメント

日曜日は真っ青な空、気持ちのいい秋晴れで、最高の山歩きとなったことでしょう。
私たちはビブリにいましたが、氷点下5度を記録したとのこと、出発時にはかなり寒かったのではないですか?
でも、あのお天気なら、眺望も満点だったことでしょう。気持ち良さそう〜。
1泊2日のプランのコースを1日で歩いてしまうなんて、さすがだなぁ。筋肉痛は大丈夫ですか?
今年の山行きはこれで最後ですか?
いやいや、かえるさんならまだまだ行ってしまいそうですね。

投稿者 りこ : 2007年10月24日 13:00

りこさん

明け方に駐車場に着いた時はちょっと寒かったですね、もう朝の4時だというのにスゴイ星空でした。
歩き始めてからは、樹林帯はシャツ一枚でちょうどよいくらい、稜線はさすがに風で体温が奪われますが、その上にジャケットをはおる程度で充分でした。
放射冷却で相当冷えると予想し、樹林帯の霧氷を期待していたんですけどね....................泣。。。
川上村って位置的にも冷え込む場所だから、たぶんビブリの方が寒かったんじゃないかな。
ちなみに、ぼくも帰りは下仁田からだったんですよ。案外近くを走っていたのかもしれませんね。

権現岳って微妙な位置で、電車とバスを乗り継いでアクセスするスタイルなら1泊2日でちょうどよいけど、車を使って直接登山口に入るとなると、日帰りだとせわしないし泊まりだとちょっと贅沢すぎる、という距離なんです。だから、ガイドブックで1泊2日と紹介されているのも、「日帰りも可能だが、あまりオススメしない」というニュアンスなのです。
実際には、ほとんどの方は日帰りで歩いていると思います。「青年小屋」なんて、けっこう大きいのにガラガラですからね。みなさん、3時前には下山されるペースなので、足の遅いぼくなどは「すごいな〜」と感心してしまいます。

そもそも筋肉がないからなのか、すでに老化が進んで超回復が機能していないのか...........山歩きで筋肉痛になることって、実はあまり経験がないのです。前回の南アルプスがたぶん初の体験です(あの時は、2〜3日痛かったです)。金峰山に登ったときは、モーのリードを持っていた左手の肘裏が筋肉痛になりましたけどね。
今回は、久しぶりに筋肉痛になりそうな予感もしたのですが、今のところ大丈夫なようです。帰りに温泉入ったおかげかな?
どちらかというと、足の裏がけっこうツライことになりました。もう半年近くにもなるのですが、足裏のイボを液体窒素で焼く治療をしているのですが、コレって「正常な皮膚ごとわざとヤケドをさせて、水ぶくれを作ることによってイボを退治する」というまさに「肉を切らせて骨を断つ」というハードボイルドかつサディスティックな治療法なのです。前日にコレをやったばかりだったので............

実は、この日は家族で紅葉が盛りの別の山に行く予定だったのです。
しかし、みーたんが数日前から鼻水たらしていたので、念のために取りやめにすることになり、急遽一人で出かけたという次第です。
山歩きにはよい季節ですから、2000m程度以下の山には、家族含めてまだまだ行ってしまいたいですねえ。

投稿者 かえる : 2007年10月24日 22:36

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