2007年10月20日

走ることについて語るときに僕の語ること

とても面白かった。

村上春樹の小説を初めて読んだのは、「羊をめぐる冒険」が話題になっていた頃。
どうせならということで、デビュー作の「風の歌を聴け」から順を追って読んだのが(一方通行の)長い付き合いの始まりだ。
単行本は高いので、本屋の店先でずいぶん逡巡した記憶がある。どの書店だったかもよく覚えているので、自分がまだ中学生だったことがわかる。住まいが変わり、高校入学以降その店で本を買うことはなくなったからだ。
当時ぼくは久保田早紀の熱心なファン(!!!)だったのだが、マガジンハウスから出版されていた「鳩よ!」という雑誌の企画で、この二人が往復書簡のようなやりとりを行ったことがあり、意外に思うと同時になんだか嬉しくなったりもしたものだ。たしか、久保田早紀の送った「村上さんの文章を読むと、B♭major7のコードが持つ独特な響きを思い起こします」みたいな手紙に、村上春樹が返信をするといった内容だったと思う。今から考えると信じられない話だが、当時は新人作家としてこういった仕事もしないわけにはいかなかったのだろう。もしかしたら、ぼくが村上春樹という作家を初めて知ったのは、この企画によってだったのかもしれない。
ちなみに「鳩よ!」は、「詩を観光地にしてしまった」とか何だとか批判されたりもしたほど、創刊当時けっこうな話題を呼んだ詩を中心とする月刊文芸誌で、ぼくはコレで伊藤比呂美を知った。ぼくが読んでいたのは創刊直後の数年のみで、その後のことはよく知らないのだが、何年か前にすでにこの雑誌はなくなってしまったようだ。

村上春樹の小説に対する当時のぼくの印象は、「今まで読んだことのないタイプの小説」という程度のもので、「コインロッカー・ベイビーズ」で衝撃を受けた村上龍の方がはるかに個人的にはしっくりきた。それでも、結局新刊が出るたびに買い続けたのは、その後多くの人が影響を受けることになる、あの文体がやはり魅力的だったからなのだろう。
村上春樹に関してはどちらかと言うとエッセイの方が好きで(現在はちょっと違いますが)、連載のエッセイ読みたいがためだけに、これまた今はなき「週間アルバイトニュース」という求人誌を読んだりもしていたほどだ。

ともかく、小説だけでなくエッセイ集も多数発表している村上春樹だが、今作ほどそのプライベートな心理的内面をある意味赤裸々に綴った作品はなかったように思う。文体も、今までのエッセイとはあきらかに質感が異なる。
後書きで本人も書いているように、「走ること」というテーマを軸にして語られる村上春樹という一人の小説家、そして一人の人間としてのメモワールなのであろう。

どういう風に良かったか、面白かったかはここには書かないけれど、とても面白かった。


「走ることについて語るときに僕の語ること」 村上春樹

投稿者 かえる : 13:44 |

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コメント

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